毎週数件の電話やメールで『破折治療』の問い合わせがありますが、主訴は以下の大きく二つに分かれます。

  • 根管治療の途中で割れた(もしくは割れているらしい)と言われた。
  • かぶせた(もしくは詰めた)歯が咬むと痛くて歯茎が腫れてきたので、検査してもらったら割れているかもしれないと言われた。

いずれも共通に、ほぼ失活歯で歯冠部から歯根部に及ぶ垂直破折が多いといった特徴があります(今回は生活歯の破折や歯冠部のみの破折といったいわゆる狭義の外傷性破折は割愛いたします)。

 

前者は既に前医によって補綴物や根管充填材といった人工物が撤去されている事も多いため、視診、触診だけでもおおよその検討がつきやすい印象です。さらにデンタルやCTといったレントゲン検査やエンド、ペリオの線も診るために歯周病検査も欠かせません。

図1_12 M-Ⅰ型歯根破折

12 M-Ⅰ型歯根破折

問題は、後者のケースです。

補綴物に動揺、サイナストラクト、深い歯周ポケット等があればまだ、そこを起点に診査をすすめていけます。

しかしながらデンタルはおろかCT(特に補綴物によるハレーション)でも破折部を完全に把握することが困難なケースも少なくありません。特に大臼歯の分岐部付近は、解剖学的なイスムスなのか破折線なのか、もしくは穿孔なのかは鑑別が難しく、破折初期に至ってはほぼ診断がつけられずに放置されていることが多いように思います。

実際は補綴物や歯台築造物、根管充填剤を除去しながら破折部を探索して、初めて正確な診断がつくといった症例が、最も難しいと感じております。それは過去に自院での治療の既往があっても、まして他院での治療であればなおさらそう感じます。

図2_26 M-Ⅲ型歯根破折

26 M-Ⅲ型歯根破折

 

レントゲンではDBとPの間に破折があると予想。マイクロで確認のために、

P-maxのエンドチップでレジンコア部を除去してみると、大きな穿孔部!

レントゲンでレジンコアの範囲がわかりにくく、このように直接視ることによって

はじめて現状を把握することもよくあります。

一般的に口腔内直接接着治療の必要な場合に、難易度の高い根管治療が必要な場合には『根管治療専門医』に治療の相談や依頼をすることもあります(保存可能と診断したケースにかぎります)。

そんな時に、根管治療の難易度の診断で私が参考にしている基準があります。

AAE(アメリカ歯内療法学会)の専門医の大学院生において使用されている難易度表です。

専門医ではない私は30ポイントを超えたら『依頼』の対象としています。

ただ『根管治療専門医』では破折歯イコール抜歯を基準としているところも多いので、少しでも保存の可能性が

高いと診断した際には、うまく連携して成功に導きたいと考えております。

 

経堂えきまえ歯科クリニック

保高 一成