毎日暑いですね~( *¯ㅿ¯*)。
それでも札幌は本州に比べるとまだ過ごしやすく、むっとする我慢ならない暑さは
7/25~8/10のせいぜい2週間くらいです。お盆を過ぎると朝晩は涼しさを感じるようになるので、その頃になると暑かった短い夏を却って懐かしく思ってしまいます(^^;)。本日は8年前のその暑い夏に、札幌近郊からサードオピニオンで来院されたNさんのお話をさせていただきます。
Nさんの初診時の主訴は右下のブリッジがグラグラしており歯が割れていると言われた、左下のブリッジもグラグラして外れかかっており、右下、左下の現状説明と最善の治療を提案してほしい、義歯は避けたいとのことでした。
お話をよく伺ってみますと、前の二軒の歯科医院ではいずれもインプラントを主体とした治療の提案を受けたようでした。右下2本、左下2本の保存が難しい歯はすべて抜歯し左右に3本ずつ計6本のインプラントを埋入すると、義歯を避けたインプラントによるブリッジは可能と思われましたが、Nさんはそのような治療を望んではおられないようでした。
初診時は主訴の部位を中心に口腔内全体の診査を行い、お話をよくお聞きした上で次回Nさんに以下の現状説明(図2)とできるだけ歯を保存、活用し、最小限のインプラントで可能な治療のご提案をしたところ、Nさんは当院での治療を希望されました。
右下奥(5ヿ )は歯の破折か歯周病(ペリオ)かの確定診断が難しく、右下犬歯(3ヿ )は骨吸収の進行した破折歯でした。また左下奥( ⊤7)は土台で外れて中は大きく虫歯(カリエス)になっていました。その手前の左下の歯( ⊤5)は歯根破折(もしくは歯周病)による骨吸収と深い歯周ポケットを認め、更には根尖部にリーマーが折れ込んで根尖病変を生じていました。なかなか保存の難しい歯ばかりですね(-_-;)
図3は治療を終了し初診から8年、治療終了から6年7ヵ月経過した現在の右下、左下です。3ヿ の歯根破折歯は条件が悪かったため抜歯させていただき、5ヿ 遠心の骨吸収(深い歯周ポケット)の原因を抜歯時に確定診断した上で(破折線は認められず歯周病の悪化が原因)、そのまま3ヿ 部に移植を行いました。そして一番骨幅のあった5ヿ 部の抜歯窩に右上奥のフリーになっていた親知らず(8⊥ )を同日移植しました。
3ヿ にそのまま深く移植した5ヿ の遠心面はその後の経過の中で骨吸収を起こしてきましたが、ブリッジで連結固定された状態から歯周組織再生療法を行い、現在骨の再生が得られています。
6ヿ 部は5ヿ 部に比べて骨幅が3mm強しかなく、下顎管までの距離も12mmしかありませんでしたが、同部に最後臼歯の咬合支持としてインプラントを1本埋入しました。
一方、左側は⊤5が予測通り歯根破折を生じていたため接着再植を行いました。また土台で外れていた ⊤7は虫歯が骨縁まで及んでいたため、矯正的挺出により歯ぐきの上まで4mm引っ張り上げました。
その後Nさんは上顎の治療も希望され全顎治療を行いました。うまく保存することのできたご自身の歯をできるだけ長期に維持していくため、Nさんは口腔衛生に対する意識を高く持ち、1~2ヵ月毎のメインテナンスを希望し、車で片道2時間近くかけて現在も定期的に来院されています。
どういう治療をもって“患者さんのため”というかは議論が尽きませんが、どの患者さんもできるだけご自身の歯を残し、守る治療を望んでおられることは確かでしょう。義歯を回避し歯を守るためにインプラントも上手く使いながら、歯を残し長期に守っていくための治療の引き出しを多く持つことができれば、できるだけ患者さんが望む治療を実践して結果を出せるのではないかと考え、長年臨床実績を積み上げながら研鑽してきました。
元々歯周病治療が専門でしたが、長期経過の中で歯を失う原因の多くは失活歯の
歯根破折であったため、何とかこの歯根破折歯を残すことができないものかということが、私の場合、歯根破折歯の保存治療に積極的に取り組むようになった大きな理由でした。また欠損が進行し義歯になると咬合支持歯の負担が増加します。鍵となる歯の条件がかなり良いか咬合力の弱い患者さん以外、長期的にはトラブルを避けることがどうしても難しくなっていきます。義歯を避けること、欠損を進行させないこと、欠損歯列を改善することを目的にインプラントや歯牙移植を上手く使うということも、保存、補綴の基本を大切にしながら取り組んできました。
13年前、故眞坂信夫先生に出会えたことで私の歯科医師人生は大きく変わりました。眞坂先生が発する歯科医療に対する情熱と理想を求める姿にいつも感動しつつ、刺激を受け、気持ちを奮い立たせ、遠い目標ではありますが、これから先の歯科医師人生、眞坂信夫先生のような歯科医師を目指して、自分の理想とする歯科医療を突き詰めていきたいと考えています。
なえぼ駅前歯科
院長 大村 修一