第71回PDM21東京Web会議 2024.5.22
夢デンタルクリニック 大久保 弘道先生
破折歯接着症例とセメント質剥離の症例について、5症例の発表をいただきました。
10年以上の経過を複数症例供覧して頂きまして、会員の皆様方と有意義なディスカッションができました。
SBはフロアブルポストレジンでなるべく押し出すように注入して強度を確保すること、ティースキーパー(ハンクス保存液)、成長因子(エムドゲイン)を使用している先生の再植の予後が良いことを、会員の先生方とのディスカッションの中で伺いました。
アンキローシスを起こした際でも、6-7年は機能維持していた症例を共有して頂き、自身の臨床的認識を再確認させて頂きました。眞坂信夫先生は、歯としてしばらくの間機能できるアンキローシスを治療の失敗とは捉えていませんでした。ただ、あらかじめ患者様にリスクを説明できることは大切なことと思います。
セメント質が剥離した症例も、剥離セメント質を除去して予後の良い症例もあり、アンキローシスや動揺を起こしてくる症例もあり、実際のセメント質剥離の様子を写真で見せて頂き、非常に勉強になりました。実際に抜歯時に血液が滲んだように見える場所がセメント質剥離が起きている場所ということを何枚もの写真で見せて頂き、今後再植時に歯根膜を確認する目がより確かになりそうです。「術中に抜歯せざるを得ず、方針をー変更する場合があります。(術中詳しく説明できない可能性が高いため、) そのため術時の判断はご一任お願いいたします。」と、術前の同意書に文面を入れておくことも、改めて参考になりました。
今回共有して頂いた症例は、かなりセメント質が剥がれていたようですが、歯周ポケットもなく2015年から2022年まで問題なく機能しているようです。歯根膜欠損も3mm四方以内であれば再生するというAndresen の報告があり、治癒の反応には個人差があるので、まずは諦めずにトライする大切さを感じました。同月に北海道歯科医師会に菅谷勉先生が寄稿されたセメント質剥離の記事も共有して頂き、セメント質剥離についての知識を深めました。
大久保先生、貴重な症例と細やかなご報告、本当にありがとうございました!