歯科医師になって40年、これまで多くの先生方に様々なことを教えて頂いて参りましたが、特に影響を受けた4人のメンターがいらっしゃいます。そのうちの1人が歯根破折保存治療を教えて頂いた故眞坂信夫先生です。

 

 先生は東京歯科大学の17年も先輩ですが、あるとき同窓会主催の講演会で歯根破折の治療についてお話を伺う機会がありました。それまでは歯根破折イコール抜歯と教えられてきた私ですので、講演のタイトルを拝見して「ホンマかいな?」という気持ちで参加したのですが、先生のお話を伺うと治療の理論背景がしっかりしており、長期の経過症例を見せていただいたことにより、頭の中に衝撃が走りました。その後、先生が開催されている歯根破折保存治療の講習会があることを知り、すぐに参加致しました。

 

 この治療法を自分の臨床に取り入れて10年、約900名の患者さんの治療にあたって参りました。私の専門は失われた歯をブリッジ、義歯およびインプラントで補っていく補綴治療ですが、歯を失わずに済めば患者さんにとって、遙かに望ましいことだと思います。歯を失わずに済んだ喜びは大変大きいもので、治療終了後、受付で涙を流された患者さんもいらっしゃいます。

 このような素晴らしい治療法を開発されただけでなく、広く普及させていこうとされた先生の姿勢に今でも尊敬の念を抱き続けています。

吉田デンタルクリニック

吉田 浩一