第69回PDM21東京定例Web会議 2024.3.27

症例発表 徳山 岳志先生

今回の発表は、最近徳山先生が受けられた講習会からの体験を共有していただきました。

徳山岳志先生発表20240327

徳山岳志先生発表20240327

TCHと下顎の呼吸位、レーザー処置による接着を用いない破折歯根の消炎維持についてのシェアでした。

下顎は姿勢によっても運動域が変化するため、限界下顎運動位での歯牙の接触は以前から私自身も認識して、父から引き継いだ破折歯根接着保存セミナーでお話ししていたことではありましたが、それを呼吸が楽になるための下顎位、として教えられていることに、心強さを感じました。上下顎模型を取らないとわからないような、チェア上では再現できない場所に、模型で見るとピッタリ合わさる咬耗があることは、いつ見ても不思議だなぁ、と患者様の模型を見ていて感じます。

徳山岳志先生発表2_下顎の呼吸位について

下顎の呼吸位について

お話の途中で、知覚過敏、WSDと骨隆起とTCH の関係の話に及び、骨隆起は食いしばりの診断要素しない意見の先生の話を伺っていて、逆に、私自身が約30年前に大学の口腔外科教室に入局した頃には、骨隆起とTCHや食いしばりとの関連は教科書的には言われておらず、当時大学院で骨の研究していたために整形外科領域の本でコラーゲンの圧電性効果によるWolffの法則を知って、きっと力のために骨添加するためだろうなぁ、と心の中で思っていたので、いつの間にか一般的に言われるようになっていること、そしていまだに意見が分かれていることに感慨深く感じながら伺いました。

また、レーザーによる破折歯根の消炎維持について、それぞれの会員の先生方が、破折したままでも炎症を起こさずに経過観察をしている症例が何例かある、というシェアをしてくださり、私自身もそのような不思議な状態の破折歯を持つ患者様がいらっしゃるために、興味深くディスカッションしました。割れている状態でも、腫れたり痛みを感じないで残った歯根に被さった補綴歯で噛んでいらっしゃる患者様は、少数ながら確かにいらっしゃいます。そのような状況に持っていくためのレーザー治療なのかもしれません。また、うまく治療を行なっていらっしゃる先生には、それ相応の機械の使い方の工夫があることも、徳山先生の発表から知ることができました。一つの要素を満たすための手技は、別の悪影響を生み出しかねず、総合的に良い方向に治癒を導き出すための工夫が、治療をうまく行なっている先生にはあるのだろうとレーザーの使い方に関しても感じました。レーザーのそれぞれの種類による特色に関しても、会員の先生方のディスカッションに深さがあり、とても勉強になりました。

父眞坂信夫も、自身は当たり前のように行なっていた破折歯接着治療の流れの中に、”それをおろそかにしたら治癒に繋がらない、長期の予後に繋がらない”というポイントが数々ありました。自分の破折歯接着治療についてもらった際にもらった数々のアドバイスは、現在自身が行うセミナーの中でも強調してお伝えする点になっています。

それぞれの著名な先生方の提供してくださっている情報やコメントは、全部が全部正しい、というわけではないかもしれませんが、それでもうまく治癒している、多くの患者様が助けられている、という事実の中に、何がうまくいっている理由なのか?ということを、歯に衣着せず、そして盲目的でなく、でも素直な目で見ることのできる、PDM21東京の会員の先生方の歯科医療に対する誠実な姿勢に、今回もたくさん学ばせて頂きました。徳山先生、貴重な体験の共有をありがとうございました!

(記: 眞坂こづえ)