第75回PDM21東京Web会議 2025.3.12

症例発表: 経堂えきまえ歯科クリニック 保高 一成 先生

タイトル:『破折歯接着における歯槽骨吸収の処置について』

MⅢ型歯根破折歯の骨欠損に対して, 村辺均先生のノンメンブレンテクニックの応用について

今回は、経堂えきまえクリニック 保高一成 先生に、ノンメンブレインテクニックを応用した症例を発表して頂きました。

以前、抜歯後に骨移植の上にメンブレインを置く、Open Membrane Technique を講義して頂いたことがありましたが、ノンメンブレインテクニックは、膜を置く必要もなく、施術時間も短くて済むために、応用する会員の先生方が増えつつあります。

ノンメンブレンテクニック

ノンメンブレンテクニック3種の神器

リグロス

リグロス

ベリプラスト

ベリプラスト

 Bio-Oss

Bio-Oss

概要をご説明いただいた後に、保高先生の応用症例をご紹介して頂きました。

破折FOp症例(TypeM-3)へのノンメンブレン法の応用1

破折FOp症例(TypeM-3)へのノンメンブレン法の応用1

破折FOp症例(TypeM-3)へのノンメンブレン法の応用2

破折FOp症例(TypeM-3)へのノンメンブレン法の応用2

保高先生のお知り合いの様々な先生方が、リグロスの代わりにエムドゲインを用いたり、ベリプラストの代わりにPRPを用いたり、BioOssの代わりにA-Oss, セラソルブ, ボーンタイトなど別の骨代替材を使用した際の印象やそれぞれの材料の性質についてもまとめて発表して頂き、大変勉強になりました。

中でも、リグロスとエムドゲインの違いについては、骨の再生の手応えにかなり違いがある印象だそうです。やはりリグロスの方が骨再生が良好とのことで、改めて両者の違いについて下にまとめました。

エムドゲイン: 歯周組織再生(骨や歯根膜)のためにブタの歯胚組織から抽出された、エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)が主成分。アメロジェニンを主とするエナメル基質タンパクである。アメロジェニンはエナメル芽細胞により歯の発生時に分泌され、エナメル質の基質となったり、歯根形成の際に歯根表面に分泌されて歯小嚢の未分化間葉細胞をセメント芽細胞に分化させる役を担う。

アメロジェニンは、間葉系細胞や骨芽細胞に対しては骨分化能に影響は与えないが、細胞増殖能はある。歯根膜細胞に対しては、細胞増殖およびに細胞遊走機能の両方を促進させる。

参考HP

アメロジェニンの作用

https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/61/3/61_136/_pdf/-char/ja

歯の発生におけるアメロジェニン(エナメル基質タンパク)の役目

https://www.ne.jp/asahi/fumi/dental/perio3/develop/develop2.html

リグロス: 主成分 bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子, Basic Fibroblast Growth Factor

(FGF2とも呼ばれる)), 遺伝子組み換えにより細菌培養により製造. bFGFは、間葉系細胞の線維芽細胞レセプター(FGFR1, FGFR2, FGFR3, FGFR4)に結合することで、血管新生作用を持ち、線維芽細胞を増殖させ、創傷の治癒を促す。間葉系細胞に働きかけ、骨の形成にも関与している。bFGFの作用スペクトルムは、中胚葉由来の内皮細胞, 平滑筋細胞, 線維芽細胞, 神経細胞, 一部の上皮系細胞におよび、その作用は細胞増殖, 細胞遊走,細胞生存(アポトーシスの抑制), 分化誘導, プロテアーゼの誘導による細胞外マトリックスの消化など、多岐に渡っている.

bFGFについて

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/23/11/23_11_673/_pdf/-char/ja

また、血液成分であるベリプラスト(フィブリノーゲン, トロンビン)が、どのように骨形成に効果を及ぼしているのか、もう少し深く学び直してみたいと思いました。

保高先生、素晴らしい発表をありがとうございました!