ここ数年患者樣サイド或いは、医療を提供する我々歯科医サイドでも破折歯接着治療の関心が高まって来ているようである。
その証拠に以前は見かけなかったが、ネット広告に『歯根破折治療』をうたっている歯科医院が数件見受けられるようになった。また、現在では都内でもいくつかの総合病院の歯科、口腔外科にても試みがされている様で、診察後にセカンドオピニオンとして御紹介を頂くこともある。また他の破折歯接着治療を行っている歯科院診察を受け、沢山の資料をお持ちになり、診察を受ける患者様も珍しく無い。
さらに、昔は考えらなかった事だが、破折歯の治療に否定的なエンド治療の専門家の中でも、破折歯の治療を積極的に受け入れる歯科医院が増えてきているようである。それは、他の開業医から歯内治療専門医を紹介され、『破折歯』と診断を受け今後の治療計画の説明を受けた後に、セカンドオピニオンを希望して来院される患者も複数来院されるようになったからだ。また、エンド治療専門医が地区歯科医師会の研修セミナーにて『破折歯の診断と治療』と演題としている資料を受け取ることからも、エンド治療専門医も破折歯の治療に積極的な歯科医がいることも伺える。
これらの事柄は我々、長年破折歯の治療を施してきたPDM21の会員としてはとても喜ばしい傾向であると私は考えている。
以前であれば、破折歯の治療が十分に可能である歯牙でも、破折歯との診断にて抜歯の宣告を受け入れ抜歯されてきた患者様にとって朗報であり、破折歯治療が否定的だった歯科医師が一転してチャレンジしようとする意識変化は今後の破折歯の治療の発展に寄与されるからである。
ただし、良いことばかりではなく、この破折歯接着治療に危惧される事例も見受けられるようになった。それは、十分な鍛錬や知識も無いままに、破折歯接着治療を施す歯科医も少なからず存在するようである。
今後は、益々破折歯接着治療の要望は高まり、それの要望に応える歯科医が増えて行くことになると思われる。その際には、我々PDM21の会員は接着治療を後押しするように積み重ねてきた経験や技術を少しでも多くの歯科医と共有できる機会を今後は増やす時期に来ているような気がする。
いばた歯科 井畑 信彦