歯根破折の原因は多岐にわたる複合要因と考えています。

最近目立つのが、かみしめ、歯軋り、タッピングなどの「ブラキシズム」が強く関係していると考えられる症例です。

「明け方3時ごろに激痛で目が覚めて、朝ごはんを食べようと思ったら歯が割れていた」といった患者様方が多数来院されます。ブラキシズムとは言えないかもしれませんが、食事中に噛み割る患者様方も多く来院されます。原因は別として「外傷歯」に分類される物で、生活歯で治療履歴すらない歯牙が多数を占めます。

歯の破折だけでなくう蝕や歯周病においても,「過度の機械的負荷」が強く関与していることは従来から報告されています。「過度の機械的負荷」の代表がブラキシズムと考えられ,とりわけ「睡眠時ブラキシズム」による咬合力(機械的負荷)は過大となることは周知の事実です。

睡眠時ブラキシズムはほとんど自覚がないために、ベッドパートナーの指摘によるものが大半でした。ただし、歯軋りやタッピングによる「歯の損傷」はあまり見られません。大半は噛み締めによる「歯牙の破損」が多いと考えていますが、噛み締めは「音がしない」ために他からの指摘がありません。起床時の咀嚼筋群の疲労により自覚することが多いという事実があります。

「歯根破折、歯の損傷」を専門としている立場として、この「過度の機械的負荷」の代表である「睡眠時ブラキシズム」の診断が絶対に必要であるにもかかわらず、定量化は困難,簡易な検査方法がないのが現状です。診断できないものに対して治療(管理)はできませんので、「経験に頼るのみ」という学問的にはなんとも情けない状態でした。

 

睡眠時ブラキシズムに対して当院ではBUTLERの「Grind Care」を使用して効果を得ています。このデバイスを患者様方に使用していただき、「日々の記録、ブラキシズムの履歴」といったデータ、また「1時間あたりの平均ブラキシズムの回数」を取ることで「睡眠時ブラキシズムがある」という診断ができるようになりました。構造上ブラキシズムの定量化はできませんが、いままで未知の領域であった「睡眠時ブラキシズム」を棒グラフで可視化できたという点では大変な進歩だと考えています。

 

さらにこのデバイスはブラキシズムを検知すると微弱な電流を発生してブラキシズムを低減するので治療機器として使用できます。継続使用することで、次第にブラキシズムの発生回数を低減することができます。ボツリヌス製剤のような即効性はありませんが、

「Grind Care」と「ボツリヌス製剤」を両輪とした診断、治療を継続するつもりです。

データが揃いましたらいずれお話ししたいと思います。

 

長谷川歯科診療所

長谷川 晃嗣