現在では多くの臨床医が垂直歯根破折歯の「接着修復延命治療を」行なっています。1982年以来の「眞坂の方法」をベースにし、その後の研究を積み重ねた方法を用いています。

しかし全てのドクターが垂直歯根破折歯の保存を行うわけではありませんし、施術すること自体に反対しているドクターも多いように思います。

 

  • 歯牙破折の分類、審査、診断、マネージメント 076 石井宏監修、著、デンタルダイヤモンド、東京、2015年」

にはこのような方法は「現時点では開業医が行うべきではない。」との記載がありますし、また海外の成書である

  • D.Ricucci, j.F.Siqueirira Jr リクッチのエンドドントロジー 411  クイントエッセンス.東京. 2017

には「文献においては接着材で、破折片を「再付着」して再移植するなどの『大胆』な治療を実施して経過観察をおこなった症例も報告されているが、垂直破折により障害を受けた歯の予後は不良であると見なすべきである。」とあります。また

  • 「近代口腔科学研究会雑誌 44 No.1 2018年」にいたっては

眞坂の方法をもとにした歯根破折歯の保存療法を真似て患者に「そのような治療を施す歯科医が出ないことを願う」ものである。

とまで書いてあります。

いずれも散々な評価です。ただ内容を精読すればそれぞれの主張があるようで、一概に否定はしません。

 

ただし、ここ数年の動向として接着修復延命療法に関する好意的な成書が数多く出版されています。

  • エンドドンティクス 第6刷:2022年3月1日 には

「早期に垂直性歯根破折を検出できた場合には、接着性材料で補強することにより破折歯を救済できることもある。(P.215)」

  • 歯内療法学 第5刷:2021年2月20日 には

「垂直性歯根破折歯を歯科用実体顕微鏡下で接着し、感染根管治療を行うことでの延命処置を図ることが可能である。また近年接着再植法の進歩によって陳旧的な破折ではなく、新鮮な破折であれば適応症となることもありうる。(P.207)) などの記載があります。

特記すべきは、上記2冊は現在日本全国の歯科大学で使用されている「歯内療法学」の教科書です。

すなわち最近の歯科大生は「垂直性歯根破折=接着治療」ということを大学で学んできています。かつては否定すらされていたこの術式も、近年は教科書にまで記述されているようになってきました。大変に喜ばしいことです。

1982年以来、多くの臨床医や、研究者が「垂直性歯根破折歯」の保存にあらゆる努力をした結果です。臨床医の間では誰しらぬもののない事実として広まっている術式と考えて良いと思います。

 

ところで、最近ウェブサイトを見ると「垂直性歯根破折」の保存をうたう医院が増えています。同時にこれらの医院で行なった接着修復延命療法の予後不良症例も増えてきていることを感じています。故眞坂信夫先生のDVD を見てこれを真似て行なったと思われる症例の「後始末」をすることが増えてきています。今後この傾向はさらに多くなる予感がします。

 

みなさんも垂直性歯根破折歯の保存をご希望ならば、十分な経験のある臨床医の元を訪れてください。

受診先に迷われましたら、ウェブサイトにある「PDM21推薦医院」に受診なさり、ぜひ上質の医療をお受けください。

 

長谷川歯科診療所

長谷川 晃嗣